
Vol.7
「なぜ勉強しなければならないのか」という子供の疑問への答え方
今も昔も変わらず、子供たちが親に向かって口にする疑問があります。
「なんで、勉強なんかせなあかんの?」
「将来、なんの役に立つの?」といった、
そもそも論です。
面と向かって子供から、そういう根本的な質問をされると、どう答えていいのかわからず、適当にお茶を濁すか、「ごちゃごちゃ言わんと、黙って勉強してたらええねん」とおさえこむ親御さんが多いようです。
そこで今回は、なぜ学校の勉強は必要か、この問いをきちんと真正面で受けとめて、子供たちにロジカルに説明する方法をお話しします。
学校教育が必要な理由――「学びの目的」といってもいいでしょう――は、
3点に要約できます。
1つめは、「考え方の方法を学ぶため」です。
学校の勉強には、与えられた知識をどうやって理解し、取り込んでいくかが求められます。嫌な教科でも、事柄・知識として取り込んでおけば、それは「考え方のひとつの方法」として機能し、関連する課題に出会った時、必ず役立ちます。
そういった「入力と出力」の方法を学ぶことが、第一の理由です。て見て、いまの我が子をできるだけ客観的に見ることができるようにしてあげてください。
2つめは、「論理だって物事を考える訓練をするため」です。
設問を解くためには、自己の情緒や価値観を排除して、客観的に考える必要があります。そういう思考法で考える訓練をするために、設問があるのだといえます。
国語な苦手な子供はよく、文章の読解力の問題が解けずに悩み、「作者の本当の心情なんか曖昧なもんや、この答えでも正解ちゃうの?」という疑問を抱きます。しかし、文章を論理的に読解していけば、答えはひとつに収斂されていきます。これが、物事を論理的に考える訓練であるわけです。
数学でいえば、公式の中に収斂されていく事象を理解する、ということがいえます。
社会人になっても、「ロジカルシンキング」という、ビジネススキルを体得することが求められます。
学校時代に真面目に設問に向き合い、論理的に物事を考える訓練を積んできた子供ほど、社会人になっても、ビジネススキルを上手に習得するものです。
3つめは、「日々の暮らし方を学ぶため」です。
学校での勉学は、集団生活です。部
活もありますし、友人との会話もあります。
こうした、集団で学んでいくことの意義を理解するというのが、学校教育の大きな目的のひとつです。
学校で集団生活を送ることで子供たちは、集団と個(自分)の関係性を理解し、社会性を獲得することができます。人は、社会性を抜きに生きてはいけません。社会人になり、組織に属した時、学校で身につけた社会性は必ず生きてきます。
大企業が新卒採用をする時に、頭脳明晰で素直、かつ体育会系の部活に打ち込んでいた学生を採る傾向が強いのは、先輩後輩関係でしっかりとした社会性を身につけている確率が高いからなのです。
それくらい、社会性の獲得は、子供にとって重要なことです。
残念ながら、個人指導塾ではその面が弱いので、私の塾では、待合室にさまざまな学年の子が集まるように、なるべく年齢幅を持たせて混在させています。そうすると、何度か顔を合わせて顔見知りになると、授業が始まるまでの待ち時間に、おしゃべりをするようになります。
違う年齢の子供同士で会話をすると、それはある種の刺激になり、時には啓発を与えあう効果もあります。学校以外の場所で、同じ年頃の子供同士がコミュニケーションをとるというのは、こういう効果もあるのです。
さて、以上3つの学校教育の目的を述べてきましたが、これら3つの「学びの目的」は、子供たちが社会に出ても、実践的・実用的に役立つことがおわかりいただけると思います。
すなわち、「勉強なんかしたって、社会に出たらなんの役にもたたない」という子供たちの言い方は肯定されません。
もしも今後、子供さんから、「なぜ勉強をしなければいけないのか」という質問をぶつけられた時、この3つの目的のうちの1つでも覚えておいて、教えてあげてください。
子供の素朴な疑問を真正面で受けとめ、真摯に答えようという大人に、子供はシンパシーを感じるものです。