
家庭での学習方法―1)「自立学習」
私の個人指導塾には、さまざまな親御さんが相談に来られます。なかには、「不登校」といったシリアスな問題を抱えておられるご家庭もありますが、いちばん多いご相談は、
・「どうしたら学校の成績が上がるのか」
・「志望校に入るための学力を身に付けるにはどうしたらよいのか」
といったものです。
そういった親御さんにまずご説明するのは、「自立学習」という言葉です。
自立学習とは、「勉強は自分がするもの」という自覚を子供自身が持ち、自発的・自律的・継続的に学習に取り組むことをいいます。
自立学習が身につけば、学力は自ずと向上するものです。
ただし、「自立学習」を身につけるには、まず「足場」となるものを築く必要があります。
それが、「精神力」と「生活力」です。
「精神力」とは、「勉強は自分がするもの」というやる気―モチベーションという言葉でよく表現されますが、内側から押してくれるもののことです。
「精神力」と「生活力」
これは、信頼できる第三者(塾の講師や学校の先生など)がスイッチを押してあげると、うまく起動し始めます。まずは出来たことをほめることから始めると、子供のやる気は、どんどん高まっていきます。
残念ながら、子供に深く関与し過ぎる親御さんでは、これがうまくいきません。子供さんが反抗期にあれば、それはなおさら困難になります。
どこにそのやる気スイッチがあるのかは、個々人で違いがあるものなので、一概にはいえませんが、40年近い教育経験から、私にはそのスイッチのありかが概ねわかります。このように子供の個性に合わせた指導を適切に行うのが、個別指導塾の役割です。
一方の「生活力」とは、自立学習を実践する場のことです。
日々の勉学シーンにおいて、身の回りの整理整頓から効果的な勉学法までを、習慣づけることが極めて重要になります。
こうした効果的な勉強の仕方を、学べるのが、個人指導塾というふうに考えてもらえればよいと思います。塾で学び方を教えてもらい、「生活力と精神力」の両方が伸びると、目に見える成果として、学校の成績が上がります。
面白いことですが、生活力と精神力は、仲のよいライバル同士のように、競い合いながら伸びていきます。両者は、葛藤し拮抗しながら、より一層の高みを目指していきます。いわゆる「相乗効果」という状態です。
この時点でまた、面白い現象が起きます。
不思議なことに人間の心は、「生活力と精神力」のどちらか一方がより高いレベルに到達すると、もう一方も伸びた方のレベルに合わせようと、熱心に努力するようになるのです。結果として、生活力と精神力の成長は、加速度的に伸びていくことになります。
こうした現象は、スポーツの世界でもよく見受けられます。一流のアスリートは、例えば100m走で10秒台前半が1度でも出せたら、「また出せるはずだ」という自信と自己実現欲求が高まり、さらに前向きに練習をするようになります。
勉強も同じことで、一度高みを知った子供は、またそこへ到達してみたいと切に願い、熱心に努力をするようになります。これが、「自立学習」が身についた状態です。
では、具体的にどうすれば、「生活力と精神力」の両方を、うまく機能させながら、伸ばしていけるのか。
比較的わかりやすいのは、「精神力」です。
自分自身が、よりよくなろうとする「向上心」を育ててやればよいのですが、これは、「生活力」が高まれば、そちらのレベルに合わせようという作用が働くうちに、自然に身につくものです。
となると手始めは、まず「生活力」を高めていくことであるとわかります。次回以降のコラムで、「生活力」を高めるための具体的な方法を、お話したいと思います。