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個別指導の学習塾『教育工房あ〜く』ホームコラム一覧Vol.20 「社会性」について 第3部 学校と「社会性」の育成

Vol.20
「社会性」について
第3部 学校と「社会性」の育成

では、地域的な支援環境が破綻している現代において、こうした児童生徒の社会性の能力を育む場をどこに求めたらいいのでしょうか。

結論から言えば、こうした「社会性の育成」を養う場は、学校くらいしか残っていないということです。

公立小・中学校では、それでもまだ地域とのつながりは保たれている所が数多くあると思います。しかし、「あ〜く」などに通っている私立中学高校生たちは、地域住民とのつながりは一層希薄になっているはずです。

先日も当塾で面白いことが起こりました。
道を挟んだ向かいの中学生と高校生が、「あ〜く」で始めて挨拶をしたということです。

通っている私立の学校が違うために、親も本人同士も言葉を交わすことがなかったという訳です。

それほど地域の中では近隣住民との繋がりは脆弱になっています。
まして、学力の補充や向上を求めて予備校や学習塾に通っていても、そこで過ごす時間には限りがありますから「社会性の育成」はまったく期待できません。

そう考えると、生徒と教師の人間関係、同年齢の生徒同士の「ヨコ」関係、先輩と後輩の「タテ」関係、その三つの関係性から社会性を身につけることができる学校、とりわけ私立中学高校は、「社会性の育成」における最後の砦といえます。

大学進学に向けた「知育」というよりむしろ、年齢や属性の異なる人たちとどう馴染んでいき、どう存在感を出せるか。
それらを体験的に学ぶことが学校に託された大きな役割になっていると考えます。

地域社会が失ってしまった役割を、学校が背負っているというわけですが、この点に関心を持っている学校はそれほど多いとは言えません。

「ヨコ」の関係性だけでなく「タテ」のつながりに留意したクラブ活動や運動会などを、意図的に配慮したイベントや仕組みを生み出す必要があります。
つまり、「タテ」の関係性の構築こそ、最良の教育法だと考えます。

この良い例が、灘中学高等学校の数学の教え合いです。
職員室の前の廊下を含む広いスペースがあり、そこでは教師への質問受けの回答をする場所になっていますが、その場を使って先輩が後輩に数学を中心に教えているということです。

こうした教え合いは教科だけでなく、体育会系のクラブでも数学研究会や物理化学系のクラブでも実行可能だと思います。大事なことは、学校が率先して「タテ」の人間関係を意図的に作れるかどうかです。

東京にある開成中学高校でも、前の柳沢校長が始めた実例があります。
新年度が始まるとき、開成の教員の最大の任務は新1年生を部活動に参加させることだそうです。

クラブに入会すれば、その後は良いことも悪いことも全て先輩が教えてくれるシステムになっているとのこと。

教師一人では、クラスにいる数十人の面倒を見るといっても限界がありますが、少し年上のロールモデルが近くにいる環境を与えれば、「自分もああなりたい」という先輩を見つける機会ができるので、あとは放っておいても自然に人間関係を通じて成長していくようです。

私立の難関中学校では、それまで小学校で一番だった子どもたちが集まってくるため、5月末の中間試験の結果で「43人中42位」など、それまで見たことのない順位を目の当たりにします。

そこで意気消沈して人生の終わりを感じさせないための仕掛けとして、開成中学校では部活動や運動会に力を入れています。

私が奉職していた西大和学園にも、灘落ち組、東大寺落ち組が毎年数名います。
この悲劇を現実として受け入れられる生徒はいいのですが、現実と自意識が作り出す自画像との間に悩む生徒の中には、突発的な行動に走る生徒がいます。

こうした生徒を救うのは、教師の持って回った説教でも、予想通りに入学してきた級友でも、予想外にも入学したラッキーな友達でもなく、おそらく同じ苦しみを克服したことのある先輩であると考えます。

現在柳沢先生は北鎌倉中学高校の学園長を務めておられますが、赴任して一番印象的だったのが「タテ」の関係が弱いことだったそうです。

それを受けて、新しく「理系教科委員会」を発足させ、数学系・理科系・情報系の検定に、学年を越えてチャレンジする団体を作られました。

数検ならば、1級から11級まで幅広いレベルが設定されており、自分の実力に合わせて挑戦でき、週2回部活動のように集まって、問題を解き実力を上げていき、通常授業での数学の成長に繋げていくことを趣旨としています。

ここでは学年の壁もカリキュラムの違いもないわけですが、数検の級の取得を主眼とはせずに、いろいろな学年の子どもが集まる場を設け、タテのつながりをつくることで人間関係からの相互作用を期待していると思います。

スポーツ系のクラブでもこうした「タテ」関係の支え合いは可能です。
私が育った時代の運動クラブでは、落語家の芸と一緒で先輩の技を見て盗むといったものでしたが、今はタテ関係がかなりフラットになっています。

とりわけ中高一貫校では、文化祭などのイベントで「タテ」関係を意識した構造づくりを目指している訳ですから、ポジション別の合同練習を開くこともできますし、試合後の反省会にも先輩やOBが参加して意見を言うことができます。

そうした場を通じて知り合った先輩が東大や京大などの有名大学に入学する姿を見て、自分もそうなろうという学業での期待値も生まれる副次的な恩恵も生まれます。

最後に

今の生徒(学生もかな)を見ていて一番嘆かわしいことは、当たり障りなく、平和裏に、ささやかな喜びを満足する心性と、出来るだけ守備範囲が鮮明な内向き志向にあると思います。

初めの方で述べた例えを使えば、3,4歳の子どもが玄関口から自分の家が見える範囲までは遊びに出るが、それ以上離れた地域には出歩こうとしないようなものです。

少子化とともにわが国の今後の成長が危ぶまれているこの時期だからこそ、私立中学高等学校が自らの社会的意義に目覚めて、より知的で好奇心に溢れ、打たれても起き上がるresilienceのある心豊かな生徒の育成を、「タテ」関係の構築を通して図っていただきたいと切に願う次第です。


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