
Vol.22
不登校について②
当塾には今でも学校を休みがちな生徒がいます。以前は不登校の生徒を毎年1~2名程度預かって教育支援をしていました。
彼らの多くは心理的な要因が主な理由で、その発端は学校環境になじめないものが一番多く、次が学校に行きたくないなどの心理的要因でした。
しかし、休校時間が長くなると一日中ゲームに時間を費やしたり、世間の目が気になって家から一歩も出ることができなくなるなど、その原因はより複雑になっていきました。
学校には行けないが、ほぼ毎日塾に来て必要な課題をこなし何とか高校入試までこぎつけた生徒もいれば、高校を中途退学し大学検定試験を受けて無事大学に入学できた生徒もいれば、高3になっていきなり学校に行けなくなり、最低出席日数を保つために本人・親・学校と交渉し、何とか京都大学に入学した生徒など、思い起こせばさまざまな生徒がいました。
こうした実践を通して不登校生の実態を考えると、協働学習によって不登校の生徒がなくなった事由がますます判然としません。
東与賀中学校では、好きな生徒同士がグループをつくり、気の合った仲間によるグループ運営が児童生徒には大きな学習動機となっている点は理解できます。居場所のなかった児童生徒に、仲間が存在感を与えてくれる。そのことで、行きたくなかった学校に行くことができるようになった。
しかしながら、グループでまとめた結果の評価はどのようにして出されるのでしょうか。このテレビ番組でも、この点については触れていないので詳細は分かりません。
平成29年から運用されている学習指導要領総則篇第3章第3節には、協働学習の評価体系について、「指導内容や生徒の特性に応じて、単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評価の場面や方法を工夫し、学習の過程の適切な場面で評価を行う必要がある」と考え、その際「学習の成果だけでなく、学習の過程を一層重視することが大切である。
特に、他者との比較ではなく生徒一人一人のもつよい点や可能性などの多様な側面、進歩の様子などを把握し、学年や学期にわたって生徒がどれだけ成長したかという視点を大切にすることも重要である」と書かれています。
まさに東大出官僚の秀逸表現ですが、現場の教師たちにとって35名程度とは言え、一人一人のよい点や可能性などの多様な側面、まして進歩の様子までどうやって数値化(文字化)していくのでしょうか。
総則ではさらに、評価規準や評価方法等について、「事前に教師同士で検討するなどして明確にすること、評価に関する実践事例を蓄積し共有していくこと、評価結果についての検討を通じて評価に係る教師の力量の向上を図ることなどに、学校として組織的かつ計画的に取り組むことが大切である」と書かれています。
ブラックジョブの代名詞にもなっている教職現場に、こうした下準備と授業後の検討会を進めていく余裕など微塵もないのではないでしょうか。
まして管理職者がすべてのクラス・教科を「組織的かつ計画的に取り組むこと」などできるはずもありません。